2015年2月20日金曜日

アンソロジー歌集「31/84」の事

短歌は皆様ご存知の通り、5・7・5・7・7の音節区切りで
計31文字で構成される詩形の一種です。そんなわけで
今年31歳になる方々とのアンソロジー歌集に参加させて頂きました。
アンソロジー歌集「31/84」

こちらでは歌集内容について簡単に感想を書いてみます。

「画布をひろげて」 (星乃咲月さん)
人生は切り取ったら、やさしい言葉と一緒に鑑賞したくなる
うつくしい絵になるのでしょう。色彩図鑑のようで素敵。


「一〇〇〇光年と一一三一五日」 (伊波真人さん)
今も昔も恋人たちは星を見て何を思うんだろう。
星は何を思わせるんだろう。星座早見表を引っ張り出したくなります。


「ケータイ宇宙論。」 (大木はち さん)
手紙を渡しに行ってた時代が、いまやメールにチャットになったけど、
けっきょく恋するのは変わらないとか、最高じゃあありませんか?


「うつろい」 (古井久茂さん)
序詞と縁語のみを使ったお歌だそうで、恥ずかしながら
意味を調べてしまいました。紙面の文字並びすら美しい技巧。


「30をこえて」 (さまよいくらげ さん)
而立、ですよ。孔子先生はおっしゃいましたよ。ええ、できてません。
だれかの30は、年齢でも個数でも単位でもあります。


「はこの中」 (白井舞さん)
とびきり狡猾でかわいらしくて果実の色したグロテスクな狂気。
京極夏彦氏の「魍魎の匣」を思い出しました。


「スプリング・オブ・ライフ」 (飯田彩乃さん)
文字を読めば、ほろほろ花びらが零れ落ち、声に出せば、
少女たちのはしゃぎ声が聞こえる幻覚。短歌の神髄とはこの事か。


「冬に」 (黒崎立体さん)
冬の空、川、街、人に溢れる冷たさに、知らない間に握り拳を
作ってしまう事を気付かされました。春なんて自分には要らない。


今回のアンソロジー企画を主宰してくださった黒崎立体様、
また「31/84」を読んでくださった皆様に、改めまして
菜の花の花束みたいな感謝の気持ちを。ありがとうございました。

2015年2月13日金曜日

2015年1月の短歌 ヒト型クッキー

きれいなの汚いの全部詰め込んでどこか遠くへいけるだろうか

新しい使徒の形を考えて君の笑顔を得たいと思う

外国の解凍肉の赤黒さ病葉のごと蝕んでいく

私にも傷を付けてと寄ってきてすり抜けていくずるい人たち

包丁で刺されたらきっと痛いねと深夜プロレス君と見ている

特定の人の気持ちがほしくって攫われすぎるピーチ姫たち

突風の先に揺れては干からびてあらゆるものが弛緩していく

いたらないところばかりが多すぎる不良品なら返品してる

不穏のふ不可逆圧縮吹雪のふファーストキッスうふふふふふふ

口にする容易な情緒不安定死んだら死んだでかなしいものね

ごめんなさいあたまがわるくてわかりません拒絶はどこへ行けるのだろう

わずかでもいいから好きだと言ってくれたまには揺れて生きてもみたい

コーヒーのカップに残る口紅が怪獣みたい破壊含んで

マニキュアは人差し指から剥げていく事情を知らぬお前に語る

一時間コーヒー黒い表面を見つめたままであなたは泣いた

幸せと言ってみやがれ売られゆく仔牛の暗い瞳見ながら

都合よくぜんぶ隠してしまいましょ雪は静かにだれか泣かして

どうしても優しいものに触れたくてたくさん焼こうヒト型クッキー

ご立派な御題目ほらてきめんだ僕ら私ら飢えている生

さよならや別れようとかその口で言っても多分甘く聞こえる

左手の古いかさぶた剥いでいる神話みたいなご都合主義で


2015年2月6日金曜日

題「雪」 歌会たかまがはら1月号

歌会たかまがはらさんで、2015年1月号「雪」というお題で
短歌募集をされていました。採用歌で気になったものをご紹介。

雪の白 心を病んだ友だちへけれどもきつく投げつけている
(虫武一俊さん)

わけなんて知らないほうがいいこともある心臓を流れ降る雪
(虫武一俊さん)

言葉は意思を持って人に伝えられるけど、
感傷すべてを伝えられるわけではない、と思っています。
が、虫武さんの短歌はもう、その自分の考えを
否定してくれるわけで。快い裏切りとでもいいましょうか。


自分は下記を投稿。またもや作れない状況で過去歌。

雪みたくポップコーンを散らばせるあの子のように泣き叫べたら

強い人弱い人みな雪のなか選ぶじゃなくて奪い去ってよ

電線の雀のように身を寄せて信頼なんてしてはいなくて

どうせならキャトルミューティレイションの話をしよう雪が止むまで

雪が降るエロイエロイラマサバクタニ道は容易に外されるもの