2015年7月31日金曜日

2015年6月の短歌(2) メルシーメシー

最低の低の低まで昇華してひとり酒瓶割っていましょう

手に持った花は大体干からびるそういう求め方しか知らない

どす黒い独占欲とか言うほどにみっともないと言い切れないな

糞泥のごとく静かに夜明けきて音のならない私は眠る

やがて死ぬ運命論者連れ立って征く春を征く夏を潰して

蛍火の消える川底底の底かわりにタバコ灯してやろう

悪いことすんでのとこで止めといて破滅したくばどうか二人で

夏空にいろんな人のお喋りは罵倒と化して散るくじら雲

敬愛の果てにあけびの色をして裸に剥いて食ってしまうよ

寄り添って分け合うメープルシロップは透けて琥珀の津波を起こし

悲しいの果てがあるなら早く来いメルシーメシー明るい孤独

鎧捨て日なたの中の猫の顔ただの個人に戻させてくれ

屈伏をさせて欲しいと従って膝をついたら壊れるだけだ

鶏卵とトマトのような相性を望みあぐねて茹だる盛夏よ

2015年7月24日金曜日

過去の短歌 可愛い金魚

神様の手の中で嘘、化けの皮剥いだらそれはたぶん真実

淋しさのあまり一人でシチュー煮る誰か私を埋め尽くしてよ

太陽は高くにあって照らし出すつまらないほど欲情してく

ぼんやりと愛玩動物然とした顔してないで私を責めて

歯茎見せ笑う女が見たいから雨でも貝殻拾いに行くよ

人ひとりきっかけひとつ解にしてゆるやかにいま消えて行くのか

愉しげに八大奈落語り出すまあるいお目々の可愛い金魚

オレンジの光は射してアジテーション鴉鳴く声行先を告げ

世界中伝えておくれ冬の雨至極淋しい至極淋しい

Mother,Father,Rocker,Fucker,Murderer,祈りは誰かに注げばいいよ

2015年7月10日金曜日

題詠blog2015の事(5)

041:扇
殺意にも扇情的な色がある瓶詰めになる梅雨の家々

042:特
特にもう言いたいことはないでしょう冷えてく抹茶ミルクティーラテ

043:旧
どこにでも新旧不一致ありまして喜びなんてやかましいだけ

044:らくだ
情なんて弱っちいからくだらない理由にそって穿つ展開

045:売
人間の屑と呼ばれて喜んで尻尾を振って売られる自尊

046:貨
百貨店屋上揺れる観覧車クリームソーダは冷た過ぎてた

047:四国
コンクリに浮かぶ炎天その地獄四国犬たち目ェの鋭さ

048:負
百億の夜とダイヤを散りばめて夢見るように負け犬を知る

049:尼
すべからく人魚の肉はうまいのか比丘尼に問えば何と言うのか

050:答
逃亡は解放なんかじゃ無いからね答えはいつもわたしに足りぬ

2015年7月3日金曜日

2015年6月の短歌(1) 殴るのほかに

心臓はうね回る蛇、何もかも犠牲にするさその悔いのため

こんなにさ梅雨の余白は淋しくて残酷残酷ぐるぐるまわる

10等の星に名前をつけてやる過去や誰かを否定はしない

汚される覚悟もないで鏡割る吐き気するほど優美な彼方

灰色の鱗きらめき雨は降る弾かれるほど悲しくもなる

新しい選択肢には加えよう殴るのほかに愛すの項を

唇の傷口はまだ塞がらず染みる塩気の強い愛情

大量に耳に流し込むほど出る涙わたしのことは放っておいて

バッテンの数はみんなで幾つかな肯定の末終わらない宵

万人が認める夜だつばめいろどうしようもない事をしようよ

すり鉢の中で小さくなっていく白胡麻のよう水曜のぼく

心臓は狙い定めて貫かれ空っぽ今日も飴玉を噛む

席譲る他人見かけて溶かされる母が自分を産んだ年頃

半分こ白身魚のフライから淋しさとかも溢れ出してる