2016年3月25日金曜日

テーマ「無」 うたらば第90回

たらばさんで、「無」というテーマで
短歌募集をされていました。採用歌で気になったものをご紹介。

無花果に首突っ込んで死ぬ蟻をうらやむような酒の飲み方
(外川菊絵さん)

何事もなかったような顔をしていつまでも手を洗い続ける
(えんどうけいこさん)

生活の中の綻びを、短歌って31文字で空気や過去まで
含ませて表現できるんですよ、すごくないですか。

自分は下記を投稿。
無、って漢字を使う単語で、一番好きなのは「無頼」です。
心に隠して抱えて生きていきたい。

便箋を何枚無駄にしたことか前略、あなたが恋しいのです

一生のうちまばたきで目を瞑るその数回を無限に愛す

オープンザドアーあんたが思うほど人生甘くは無いはずだから


2016年3月18日金曜日

題「オノマトペ」 歌会たかまがはら2月号

歌会たかまがはらさんで、2016年2月「オノマトペ」というお題で
短歌募集をされていました。
気になった短歌をご紹介。

ふわふわと呼べなくなった物体と別れる次のふわふわを買う
(姉野もねさん)

新しいふわふわと寝る少しだけ前いたふわふわを思い出す
(姉野もねさん)

猫、ぬいぐるみ、または人間の女かも、心にいる何かなのかもしれない。
これオノマトペでしか表現できない!と素直にびっくりして、
同時に非常に淋しくなれたお歌たちです。
入沢康夫の「キラキラヒカル」という詩をちょっと思い出しました。

オノマトペについて詳細はWikipediaあたりを見て頂きたいです。
こんなに生活に染み付いてるのに、だいたいが会話や口語でしか
聞かれないのは、面白いですよね。

自分は下記を投稿。
考えてるうちにオノマトペのゲシュタルト崩壊を起こしました。

石けんの泡ふわふわに手を洗うまともに生きる自覚がほしい

はらはらと歌うようにも溢れ落つ花びらのごと溶けていくきみ

不穏のふ不可逆圧縮吹雪のふファーストキッスうふふふふふふ

あらゆると弛むゆるゆる流れ出す許す赦さず燃る夕鶴

後悔を(ポクポクチーン)する事に(ポクポクチーン)慣れてはいない

ぬけぬけと月が綺麗だなんて言う他意はないのを知っているけど

制度的予告抑制支配欲世俗に塗れ歌え聖歌を

ふあふあのクリーム添えたパンケーキ女子なら好きって言っちゃう暴力

鉄塔をくるくる回る子供たち死は緩慢な光るたてがみ

2016年3月11日金曜日

2016年2月の短歌(1) カリカリベーコン


湿り気の強い夜越え朝が来るカリカリベーコン玉子を添えて

口に出すだけの事柄まだら柄わたしの孤独はわたしのものだ

罪悪のにおいをつけて走り出す止まる即ち老いる、否々

自惚れを許してほしい少しくらい弱さを見せる人を見つけて

人と猫、花とじょうろの間に立ってそういう愛も美しいから

ささやかに命いのちの連続へ小さい口で応じる強さ

鳥小屋の孔雀は眠る嵐の日ゆたり虹色羽根を刻んで

鮮やかな終わりを見せて消えていく淋しいなんて嘘つく花火

ゆすらうめあぶく菜の花紅の花孤独な理由を数えるかわり

何かしら嘘をつかなきゃ止まれない街灯に沿う回遊魚たち

晴天の下に震える万国旗きょうは死ぬのにもってこいの日

夜遅く仕事のことを考えてレンジの中でポップコーンは