2016年4月22日金曜日

テーマ「地」 うたらば第92回

たらばさんで、「地」というテーマで
短歌募集をされていました。採用歌で気になったものをご紹介。

地下鉄はわたしひとりを食べこぼし暗闇のなか逃げ去っていく
(小嶋えにさん)

地下鉄の独特の感触って不穏でとてもいい。
だからこそ東京に来て何年も経つけど、いまだに、怖い。

自分は下記を投稿。

路地裏に捨てる昨日の葛藤は苦い唾液を過剰にさせた

人と猫、花とじょうろの間に立ってそういう愛も美しいから

手に持った花は大体干からびるそういう求め方しか知らない

2016年4月15日金曜日

過去の短歌 街宣車

猫背気味、文学少年撫でる背の箔押し古く呪いを乞う

性愛の対象として女落ち男震えて幕は降りたり

植え込みのパンジーの顔思慮見えず春はまだまだ先だというのに

中吊りの政経記事の裏側に少女団淫らに微笑むも

焼き蕎麦に玉子をおとすくらいの贅沢を許し本日は雪

新しい礎に流れやわらかくコンクリートの匂いは辛し

暖かな日にもうひとつ増す重さ無一物への憧れ尽きず

街宣車黒塗り光り打つ鼓動サンガツトオカは冷えて晴れたよ

虫籠を持ちて出でたる少年の残像青く眼底を焼く

「月が綺麗」「死んでも良いわ」と訳されて我が情動は醜く零れ

2016年4月8日金曜日

2016年2月の短歌(3) コブサラダ


欲望の強いばかりが超過して君をいつしか潰すのだろう

顔料の代わりに飾る花の色きみの代わりに飲んだ毒液

桃色の淋しがりたち消えていく芽吹く季節へ欲を孕んで

コブサラダガラス皿の上装って冷たいなんてあなたが言うか

見も知らぬだれかの沈む湖を自分の中に育てゆく春 #短詩の風

都合よく甘口カレーを作りなさい溶けて崩れた欲を煮立てて

真ん丸い何て月だよ悲しいね通りを幾つも間違えている

八百字詰めの原稿用紙より恋文よりも短い劣情

喧騒と光る街並み逃げ始め求愛だけをしている虫だ

刺すために研がれる刃物、柔らかく刺されるために鍛える心

運命は多肉植物然とした態度で水気多めで頼む

2016年4月1日金曜日

2016年2月の短歌(2) 姫と王子を


セックスをしよう童話の世界から姫と王子を亡き者にして

空っぽの重たい頭持ち上げて真正面から臨む激情

浅はかな私の世界の中心を誰かにしたいそんな週末

星の降る夜道に吼える虎なので皮肉を全て噛み切ってやる

選ばれぬように身動ぎ縮こまる砂ばかり噛む貝ですらない

平成ももはや三十路を待ちわびるノストラダムスの裏切り者め

飴玉のように名前を転がして虫歯になりそうどこもかしこも

好きだって肯定だけで許されて悪いこと全部否定するだけ

金網を撫でて傘先研ぎながら走る影すらにじむ後悔

春が来てむしる花びら綺麗でしょう重たいだけの依存のようで

眠れない星たちどうか落ちないで祈りは雨の太鼓に消える