2016年7月29日金曜日

2016年6月の短歌(2) 餡の残虐


走ってもどうにもならない夜だから乱視で探すこぐまの星座

鯛焼きを一匹二匹と数え上げ腹を膨らす餡の残虐

背中押す優しさなんて持ってない蹴飛ばすだけの乱暴がある

つむじから髄液が出て気化をして竜になったら叫べばいいよ

錆びついた金属製の階段はう、み、は、ひ、ろ、い、な、奏でてみたり

耳鳴りの高鳴る夜は胸も鳴り眺める過去の英雄譚よ

友情の地獄のような果てにいて一人終電逃してはいる

かけられる優しさのせいで露呈する汚いだけの指針とやらの

正しさが欲しくて欲しがるペパミントメンソール氷すべてを冷やす

奪い合い求めて与え私には死刑宣告みたいな言葉

1ミリも残されてない杯を振り眺める朧月の黄身色

2016年7月22日金曜日

2016年6月の短歌(1) オーシャンゼリゼ


さすらいの文字を眺めて撫でさするとうに、諦め、られた、生活

幼児期に知ってる種類の永遠を使い倒して迎える夜明け

名前のない神様みたいな生き物を心の中で飼って痛ぶる

さよならとおやすみなさいの間には語らずに足る何かがあって

一人だけ残されている駅にいてベンチの上の眼鏡と遊ぶ

幸せになっておくれよ花を背に負って流れるオーシャンゼリゼ

先を行く見目麗しき人たちは花の名前を言えやしないさ

欲しいもの全部だぜんぶ全てだと呪文のように括る後悔

確認をするみたいなのそういうの私は私で余白じゃあない

晴れた日の乾いた和音広がって布団を叩く演奏者たち

靴さえも履かず出された夜の星むかしむかしの物の語り部

ああ実にげにかわいそうな夜である砂糖壺の中閉じ込めている

2016年7月8日金曜日

題「大人」 歌会たかまがはら6月号

歌会たかまがはらさんで、2016年6月「大人」というお題で
短歌募集をされていました。
気になった短歌をご紹介。

大人ほど大人気なくて「りんご狩り」「倫理」「リハビリ」「琉球絣」
(西村曜さん)

「ジンセイハオマツリ」と馬に名を付けた人の気持ちがわかって大人
(松木 秀さん)

同僚は宇宙人だと思ってる挨拶しても返ってこない
(なるなるさん)

子供時代の遊戯、少年期との別れ、仕事場での風景、
人生百景、いろんな大人モチーフが溢れてて、
全部気になる短歌なんですけども。
言葉や価値観を沢山持っていても、本来の大人というのはまだ遠い。


自分は下記を投稿。大人=お酒飲めるぜ、だよね。

焦げる肌鉄板の上大人たち何も知らないただ夏がある

大人でも糞とか言うのこれはただ今更ながらの反抗期です

迷うほど強い何かは持ってないただわがままな大きな子供

ぐちゃぐちゃになってやろうと飲み過ぎてうるさいだけの帰巣本能

寒いから淋しいからね弱いから酒を飲んでは無理やり眠る

語り合う夢の温度が違うだけ受ける追い風強く、強くて

2016年7月1日金曜日

過去の短歌 野良にも

三月を四月にしても浅はかね女の凄みを死ぬほど味わえ

マスキングテープで作る境界線ここに立国せかいはひろい

ハッカ飴に桜の花の塩漬けと生木の匂い春の記憶に

焦げる肌鉄板の上大人たち何も知らないただ夏がある

暗闇で吠える野良にも属さずに昼間の中の道化であれよ

淋しさと孤独は違うと知っている沸かしたお湯は冷めていくだけ

夕食の鳥肝臓の匂い立つ斎場に行く蟻の行列

貝の砂吐かす小さい偽の海我が古里はあぶくとなりき

故郷など有る為に有る我が儘よ手も口も出ぬただ舌が出る

偶像が欠け嘆いてる人もいて青く光るは背骨の直線