2016年8月26日金曜日

2016年7月の短歌(2) デビルズフードケーキ

知らぬ町道に迷って会う猫がなぜか全員白黒模様

重たさは甘くて頭の悪い味デビルズフードケーキのように

箱入りのレモンを買って皮を剥くそういう日々を愛せよ人め

強すぎるヒーローみたいな人になる子供の夢は途方に暮れる

アメスピと第二関節急き立てて知らない種類の夏を待ってる

人のいない油のような海にいて溺れてしまいたいだけの恋

惨めって舌噛む余生日々の泡多くを望めば壊れゆくこと

かさぶたを剥いで噴き出す新鮮な血液然としていてことば

饐えている揺らぐ自分の成れの果て誰かのものになれないのかと

正しさを羨んでいるあと少し欲しがり屋なら得られていたか

2016年8月19日金曜日

2016年7月の短歌(1) ラブラブキッス

淋しいは毒なんだろう君だけの為に残したメモ書きのごとく

日曜の朝から開ける白ワイン何ならみんな幸せになれ

皺のない脳味噌、平和、守護聖人、週末だけの人間ぐらし

諦めて走る雨降りコンクリの道の行く先煙って不明

溶けかけのかき氷、青、見捨てるのどうにもならない夏と夜たち

メリーメリーバッドエンドであろうともキスで帳尻合わせりゃ良いさ

最後にはラブラブキッスで締めるよな予定調和をこよなく愛す

価値のある人は肯定唆し私はただのゴミだと思う

約束はある種の呪い、自覚して忘れないでね、なんて言う奴

2016年8月12日金曜日

題「死」 歌会たかまがはら7月号

歌会たかまがはらさんで、2016年7月「死」というお題で
短歌募集をされていました。

気になった短歌をご紹介。

幸不幸いくつも波は過ぎてゆき心電図にいま訪れる凪
(西村湯呑さん)

ぼくは死ぬきみだって死ぬみんな死ぬもうすぐぼくの娘が生まれる
(エースさん)

重たい題だなあ、と思ってましたが、すべての短歌の中に
その方ならではの死のイメージが喚起されて、
採用歌だけで一つの歌集ができるくらいのインパクトでした。
一言、もう、素晴らしいので、是非リンク先のすべての短歌を見て頂きたい。


自分は下記を投稿。採用歌と比べると腑抜けているとしか。

多分もう100年後には死んでるし分かってるけど今は泣かない

安らかな気持ちで死にたい安らかな気持ちで毎日生きてもみたい

明らかに不幸になれる例として君の代わりに死ねそうなこと

わたしより先に死なない約束をしてよ嘘でもついてていてよ

晴天の下に震える万国旗きょうは死ぬのにもってこいの日