2017年2月24日金曜日

過去の短歌 白いとこだけ

イバイバの反対、なんて最後までおどけて笑ういとおしい人

八月の嵐みたいな君を抱く 愛おしい、否、苦おしい、否

銀色の光あるいは幸福な子供時代の寄る辺無い夜

ぐちゃぐちゃになってやろうと飲み過ぎてうるさいだけの帰巣本能

きょう君に声をかけると決めて踏む横断歩道白いとこだけ

100人中1人と私しかいない肯定の中走れペガサス

腐敗した再生産を繰り返す寝たい抱きたい何も言わない

こんなにも優しい人は溢れてて私の欲しいものは足りない

形あるものなら君に見えているジグソーパズルのピースは足らず

生きている間は死ぬとか言わないで缶詰チェリーを溶かす唾液に

2017年2月17日金曜日

2017年1月の短歌(2) 副流煙

淋しいと口に出したら仕舞いです独立済みの大人であるゆえ

人混みの浸透圧に耐えかねて副流煙をひたすらに吐く

八月の積乱雲のような雪あなたはいつも夏を連れてる

上等な孤独だこれは改札で好きでもないのに見送られてる

毎日の自分勝手に吐き気してショートホープに希望を詰めた

世の中のあらゆる事を試しても死ぬまで淋しい人間だろう

中毒のように一人になりたくて子供のようにさびしくて泣く

真夜中で一人で叫ぶ淋しいと残った酒にたかる蠅たち

どうしようもない日々これは仕方なく五本の指を持つ人のあざ

2017年2月10日金曜日

2017年1月の短歌(1) 海を描く日

小説に描けぬような恋をする卑しさ屈折讃えよ君よ

壁紙を全部オリーブ色にして一緒に不幸になってあげるよ

浴槽のふちに残った尻の跡まだ実体を持ったにんげん

終電は逃さぬ女の足早く幾多の塵を蹴散らせてきた

終電の窓に映った白い顔嘆いた所で変わらぬ日々よ

苦しいのかなしいの全部お仕着せる思考停止のお姫様がた

親指を浸すシアンのインク壺だれかの為に海を描く日

自画像に影を入れ込む朝化粧後ろ暗いから生きていけるの

私小説映画半券しおりにし窓に貼りつく雪の花々

二階席中華料理屋ひとびとは階段、料理はエレベータより