2017年7月21日金曜日

2017年5月の短歌(3) 妥協してよね


雲朽ちて黄色いだけの夕方を君を横顔眺めるだけの

好意って暴力みたいに、言うね、すき、きらいの方で妥協してよね

翌朝に湯を沸かす事を思いやりやかんの垢を落とす真夜中

楽しみは人によっては苦しいよ欠けた歯見せて笑う年下

眠るって業って安易に言っちゃうねあなたの横で眠らないのに

何もかも投げ出して飛ぶ白の中お前のことを忘れておいて

飽和する夜の騒ぎの真ん中で大事にケータイ蛍を散らす

夏の日の自分の影はくっきりと私の形の不安を示す

いつまでもついてくる犬猫みたい思い出なんかで美化をするなよ

2017年7月14日金曜日

2017年5月の短歌(2) 善人に紛れれば

特別な存在なのでそれらしくコンビニで好きなアイスを買おう

親しんだ罪悪感だけ道連れだぼやけた月が示す行く先

人混みの苦手な人と猫たちと意地悪な道ずるいふるさと

しがみつく肩の厚さに舌震え誰も等しく子供であった

愚かゆえ錯覚妄想くるわせて期待なんかをカラフルにする

母の背を超えて父の背超えていくそういう風に生きていければ

その辺の壁に体を擦り付けて自我ってものを放射している

善人に紛れれば混ざる性分を一人になってふつふつ沸かす

あっさりと見えなくなった未来たち煙草の煙は歪んで消えた

2017年7月7日金曜日

2017年5月の短歌(1) きみどりぴんく

詳細は省いて今日は曖昧に酒に体を溶かしてやろう

羽のない絶滅危惧種みたいだね恋とか愛とかふざけんじゃない

優しいは病気みたいだ君だってそういう誰かにとらわれている

眠れずに薄暗い部屋見つめてて蛍光塗料のきみどりぴんく

言いづらいところばかりが好きだった腕のくるぶしみたいなところ

毒を持つ生き物だったら良かったな切ったばかりの指の血甘く

米を炊く独り身なれば三合も炊いたら充分ご馳走である

街中の樹木ただただまぶしくて頭の痛みを助長していく

猫を抱く小さな腕に落ちる熱わたしの喉をごろごろ鳴らす