2017年8月25日金曜日

2017年7月の短歌(2) 数十回かの夏だ

 
口含む花びらびらびら虐げる余計な気分で遊ぶ月曜

悪意ってかわいいねケーキ尖塔の苺を盗むようなレベルで

鏡見ていらない楔だと思う顔はいつでも両親に似る

重たさを強さと同じと思い込む底に溜まったただの泥でも

特別な存在として飴を食む好きに気高く生きれよすべて

ひび割れの激しい指を寄せ集め淡い卑屈な祈りをこなす

誰からも好かれるような顔をして愛されたいと口唇を噛む

持つ方と持たない方に分けるだけ湯むきトマトの歯型は崩れ

付箋紙の糊並み剥がすくっつける社会生活かろうじていま

しみたれた感情なんて焼き尽くせ死ぬまで数十回かの夏だ

銀色の靴を履いたら強風が背中を押すよ魔法みたいに

2017年8月18日金曜日

2017年7月の短歌(1) 大声がいい

処方箋のない淋しいを分かち合う野良猫だまりみたいな夜だ

出来合いのもので満ちてく胃袋と空っぽの頭越えて満月

融通の利かない便利な世の中で私だらけの善意を溶かす

雨よ風もっと急き立て強くなれ泣くのはできれば大声がいい

聞こえてるすごい雨だねそうだよね閉じ込められた1Kふたり

泥水の上澄み外面撹拌しいつか中指突き立てる日に

淋しいと口にするほど飢えてなく代わりに優しい夜食をたべる

近付いて死ぬような毒きみのこと好きだと思う自分が好きだ

誰もいない朝の浜辺で丸くなる貝殻拾いの旅に行きたい

他の人にぶつけられる程度その悪意もっと底から羨んでいる

2017年8月11日金曜日

2017年6月の短歌 あざらしになりたい

万人の上に雨風当たり散る弱い傘握り行く人もいる

コンビニで棒付きアイス買ってみて夜へ溶け出す我がディストピア

毎日を消耗してもしなくても勝手に死んでく夢見る時代

夏の部屋大量発生する私いかん容易に死にたくなっては

恋人の皮を剥いたら他人だと分からないなら泣かないでくれ

アア、なんて目覚めたような声をして忘れられたら死んじゃうくせに

あざらしになりたいかわいいふわふわの愛されがちな何かになりたい

傾いた月の角度に首曲げて自分の道を正確にする

思い出がきれいだったらそれだけで生きていってもいいと思った

苦しめよもっとみにくく苦しめよそういう価値の元にいるなら

西日浴びぼそぼそ生きて床にいる流しに枯れたあじさいもいる

生きるのはつらい、とか言う人肌に小雨は触れて絹にぬくまる

顔色の悪い魚と隣り合う車窓から見る水槽の雨