2018年8月31日金曜日

2018年4月くらいの短歌 和菓子のように

空に花舞い散って去る人たちへいつも吐くような嘘を吐いてよ

労働者階級らしく週末に強いもの全部脱ぎ捨てている

愛用のシャチハタを押す枠の中今日はほんのり右上を向く

解せればなんてことはないこの無精ひとり静かに飲む酒の味

英雄であろうあなたは雲に乗り雨で涙を台無しにした

海だって山だって行ける金銭が財布にあってくたびれていく

花が咲くできれば春の真ん中でできれば愚かな一人でいたい

せんそう、と和菓子のようにアナウンス舌に転がる小さな叫び

2018年8月17日金曜日

2018年3月くらいの短歌 ミックスフィリア

いつだつてマイナスからのスタートで加点方式でも生きるだけ

災いと見透かされてて幸せだ良いことだらけでノートを埋めて

壁のシミ日付の数字意味持たす無駄な君らと私の時間

道端の分かりやすさのち生きやすさ半袖ちらちらのぞく二の腕

もう足りているはずなのに靴が欲しい宇宙も地獄も走っていける

声帯を持った原始の生物か類する野蛮、好きって言えよ

美しい酒の瓶種類並べ立て溺れるスペシャルミックスフィリア

雨に差す傘の角度が違うので至る世界も異なっている

偽りの正義なんぞを語るきみ、干したシーツはまだ湿っぽい

使わなくなった指貫嵌めてみて針の跡昭和九十三年

良い酒と花と手紙と転がって終わったことを噛み締めている

リノリウム床で裸足はまだ寒く頭痛のような夏を待ってる

2018年8月3日金曜日

過去の短歌 お手手繋ごう

田町では素性の分からぬ人が乗る(わたくしもまたそのひとりであり)

淋しさは発情中の猫を呼ぶだれかどうにか私を抱いて

歪むのは正しい形があるからで松葉の香り直線の君

不特定多数という名の私達転んでしまったカラフルな街

むっちりと脂肪の波を越えてって真夜中の月滑り落ちる溝

奪い合い憎しみ合ってこんなにもカスタードプリン玉子の匂い

あいうえおかきくけ殺したクックロビンさしすせそしたらお手手繋ごう

過去形に自然に出来ていっぱしにひとりよがりの愛情終わり

砂糖菓子みたいな乙女黒ペンキ浴びせて笑え非情な季節

男より女のボリューム引き上げて目尻が踊り肉の稜線