2020年9月4日金曜日

2020年初夏くらいの短歌 犠牲者像だ

火がなくて吸えない煙草の饐えた色だれもが私を捨て去りゆくは

持ち分をゆめゆめ忘るることなかれ我れ口に含む雨垂れの水

エトセトラ我に降りゆく花吹雪幻のような犠牲者像だ

世の中の不備はすべてが私ゆえ去り際に放つ意味ない謝罪

寛容と破壊で終わるお話を寝物語に説いて、眠って

立派ではない生き方で暮らしてる村人Aの身の軽やかさ

空を飛ぶ車に乗ってどこまでも逃げられるのならついていくのに

間違ってないし誰かも悪くない頭痛のように雨だけが降る

どうしようもない衝動の結末に愛とは何か考えている

当局の関知もなしに崩されるここはおもちゃの国であること

おいおいと泣けばお前の運命が変わるわけでもないというのに

目ん玉の真ん中の黒丸々と気付けば人は人でなくなる

感傷に名前をつけて溺れこむ自分一人の底無しの海