2021年3月26日金曜日

2020年冬~2021年2月くらいの短歌 犬歯と奥歯

他の人と分かち合えないわざわいを犬歯と奥歯で噛み潰してる

朽ちかけの水族館の水槽の岩陰にいる何かになりたい

眠れない夜に固まる色々をホットミルクのどぶに沈めた

生まれたての概念みたいな優しさで毛玉だらけのセーターを抱く

祈りだと思うだれかの幸福と明日は晴れたら良いなと思う

日常のあらゆることに間に合わず窓際に差す光を見てる

騒いでも夜は深々やってくる見えない筈の手品師の首

帰るには道がまっすぐ過ぎるから自発的迷子発作上等

一人だと好きに途方に暮れられる近所の犬は遠くへ吠えて

久々に割った玉子が双子とか些細な運に生かされている

服を着て溺れるみたい優しいね好きじゃないのに好きとは言えず

人間と人間の区切り位置を指定、空白置いてならえ左へ

複数の大人は君を駄目にしてキャベツ畑で裸足で踊る

毎日を食い寝て働き酒を飲み非生産性糞袋ゆえ

終わりまで見きり走ればいいだけだ足はどうにも海を目指すが

永久に間に合わなかった感覚をレースカーテン光が透ける

記憶にある海は君彼彼女らといつか早朝悪さした海

自分には難し過ぎる人生が他所様の価値観の物差し

柔らかい言葉で丸め要点は眠たくなっちゃう自己責任論