2021年11月5日金曜日

2021年6月~2021年9月くらいの短歌 いつも正しい

新しい限界の数増やしたく豪雨の中を傘無しで行く

汗混じり薄荷の匂いはぬるくなる淋しさだけはいつも正しい

憂鬱の数を指折り両手では足りず我らの千手観音

ピーナッツバターで作る壁により我が王国の安寧を得る

家で作るドーナツの味知ってると色んな事がむつかしくなる

皆さんがすやすや眠っているあいだ世の中ちょっと良くしておくね

肯定を突き詰めてみればのさばってやがて竜にもなれるだろうに

幽霊に生理があるか客体の自分勝手に身をよじらせる

冬を呼ぶ早く冷たい空気吸い身がきれいだと錯覚したい

永久に読めなくて良い読み仮名を不幸になって無理矢理に知る

2021年8月6日金曜日

2021年3月~2021年5月くらいの短歌 肋にもなれる

孔雀にもペルセウス座の肋にもなれるといってなれなかったね

腐らせた卵の殻を割るように後悔なんて一瞬のこと

まぶしかった思い出だらけそれだらけ兵糧みたく食い繋いでる

誰からも大丈夫だってお墨付き私の為に泣いたら良いよ

意味なんてこじつけだけで十分で今日はだれかが祝われてた日

腹に乗る人の重さはいかほどか髪やら首やら足やら締まり

読まれない本をたくさん積み上げてわたくしだけの要塞と成す

どうにでもなっちゃえと思いなろうとし思いとどまる日が続いてる

手に持ったうるさい青は揺れたままあぶくになって消えてしまった

2021年3月26日金曜日

2020年冬~2021年2月くらいの短歌 犬歯と奥歯

他の人と分かち合えないわざわいを犬歯と奥歯で噛み潰してる

朽ちかけの水族館の水槽の岩陰にいる何かになりたい

眠れない夜に固まる色々をホットミルクのどぶに沈めた

生まれたての概念みたいな優しさで毛玉だらけのセーターを抱く

祈りだと思うだれかの幸福と明日は晴れたら良いなと思う

日常のあらゆることに間に合わず窓際に差す光を見てる

騒いでも夜は深々やってくる見えない筈の手品師の首

帰るには道がまっすぐ過ぎるから自発的迷子発作上等

一人だと好きに途方に暮れられる近所の犬は遠くへ吠えて

久々に割った玉子が双子とか些細な運に生かされている

服を着て溺れるみたい優しいね好きじゃないのに好きとは言えず

人間と人間の区切り位置を指定、空白置いてならえ左へ

複数の大人は君を駄目にしてキャベツ畑で裸足で踊る

毎日を食い寝て働き酒を飲み非生産性糞袋ゆえ

終わりまで見きり走ればいいだけだ足はどうにも海を目指すが

永久に間に合わなかった感覚をレースカーテン光が透ける

記憶にある海は君彼彼女らといつか早朝悪さした海

自分には難し過ぎる人生が他所様の価値観の物差し

柔らかい言葉で丸め要点は眠たくなっちゃう自己責任論

2021年1月15日金曜日

2020年秋くらいの短歌 JISコード外

真夜中に起きてて辿り着けるのは牛乳だけが切れたコンビニ

信仰は羽根を散らばす雪になりどこまで私を虚仮にするのか

喉仏に骨があるとかないだとか知らなくていいことばかり知る

月のないさみしい夜に抱きしめる犬猫のたぐい人間の脚

デコレーションケーキをドレスアップだと言い切る語彙は聡くて好きだ

望むらくは誰かにすべてをゆらがして壊してほしい世界が世界

かなしくて泣くべきときに泣く人がうらやましくて笑う脆弱

学級の水槽金魚を殺したと無い記憶たちは追いかけてくる

灰色の部屋でコーラを飲み干して神経質な夜へ出かける

把握してない事ばかり増えていき一人で勝手に途方に暮れる

���常用漢字とJISコード外の名前を持った人々

分かりやすくメサイアコンプレックスに雨の音たちやたらにでかい

甘口のカレーも大概飽きたろう俺を忘れて幸せになれ

粛として製氷皿で痩せていく冬の氷は閉じ込めていく