思ってもいない言葉で尽くしきる手の甲に浮く血管を見る
死なない蛸、死ににくい蛸、死んだ蛸、防災無線で流される蛸
頬肉に刺さる魚の骨を抜くかつては海でゆらいだ背骨
明日には消えるぬかるみ柔らかく昼の尻尾を追いかけている
好きだった人が好きだった食べ物を食べるたび思う雪の降る町
次に転ぶワンパターンの目を予想するすごろく上の日々でおあがり
君よりも先に死ぬから言い逃げする進化と退化の行先を見よ
もう全部おしまいにして連れてくる冬の晴れ間の罪悪感だ
いざやろうと思えば仕事を欠勤し海をひたすら目指せるのにね
何もかも名前を付けて曖昧を許せないまま足枷にする
大切が何かの形をとるならばふわふわの犬であるとうれしい
今回も上書くだけの思い出も覆うだけの雪全然足りぬ
憧れも罵りも人のせいにして彼らの中身も内臓がある
いつかまた会えたら良いねその時はそういう種類の地獄に落ちる