2022年4月29日金曜日

2022年1月~3月くらいの短歌 海をひたすら

思ってもいない言葉で尽くしきる手の甲に浮く血管を見る

死なない蛸、死ににくい蛸、死んだ蛸、防災無線で流される蛸

頬肉に刺さる魚の骨を抜くかつては海でゆらいだ背骨

明日には消えるぬかるみ柔らかく昼の尻尾を追いかけている

好きだった人が好きだった食べ物を食べるたび思う雪の降る町

次に転ぶワンパターンの目を予想するすごろく上の日々でおあがり

君よりも先に死ぬから言い逃げする進化と退化の行先を見よ

もう全部おしまいにして連れてくる冬の晴れ間の罪悪感だ

いざやろうと思えば仕事を欠勤し海をひたすら目指せるのにね

何もかも名前を付けて曖昧を許せないまま足枷にする

大切が何かの形をとるならばふわふわの犬であるとうれしい

今回も上書くだけの思い出も覆うだけの雪全然足りぬ

憧れも罵りも人のせいにして彼らの中身も内臓がある

いつかまた会えたら良いねその時はそういう種類の地獄に落ちる