2018年9月14日金曜日

2018年6月くらいの短歌(2) だらしない

心ならどうにでもなるそんな日に火を点けて燃やすだらしない首

怖いなら自分が更に恐ろしい何かになれば溶かせる呪い

だいじょうぶ、夜はどこでも平等に誰の上にも訪れるので

台風のふうふうだけで飛んでいく夜はまばらに消える花たち

脳みそに降り始めた雨止まなくて傘すら持てぬそういう夜更け

尊敬も遠慮も全部いらなくて剥き出しをみたい子供みたいに

肉体が衰えることは知っていてにも関わらず心の皮肉

2018年6月くらいの短歌(1) ただの他人

薄情に掌を振る人もいる私のための選択肢あれ

どうかして血中濃度の濃い日々を倒れずにやるエモい人々

朝でなく夜であることを証明セヨただ低い位置のぼやけた満月

ベランダで夜の呼吸を聞いている。猫、女、雨、風、車、白

時間差で聞いてくるのか劇薬は夜の言葉で朝がかなしい

ごめんねの言い方ひとつ知らないでただの他人と暮らす淋しさ

どうせなら結婚式も葬式も生まれた時もあなたが見たい

自らが幸せじゃなくて浅ましく願う他人の不幸せごと

2018年9月7日金曜日

2018年5月くらいの短歌 雪柳みたい

人生はだれかの犠牲になるよりも崇め奉られる方がたのしい

去り際に交わす目を伏せ淋しさをそんな余韻で言わないでくれ

雨が降る俺と一緒に死ねないか知らない人のささやきの声

人は皆いつか死ぬ事実それだけを糧に予定を黒く塗り消す

祈るなら百万回でもやらかせよ許す自分が好きな神だけ

終わらせる理由ほしくて吐く嘘は重くて白くて雪柳みたい

生きている資格ほしくて持つ物を生き直したくて捨てる毎日

魂が出あえ出あえとうるさくて葉物野菜を千切りにする

駅に咲くポスターの肌きらきらと猫背の人のうなじに挿さる

電線に引っかかるだけ低い月やましさだけが肥大している