2019年12月27日金曜日

題詠blog2019の事(10)

2019-091:慎 
ひとりだと室温だけが明らかで慎ましやかに進む曖昧

2019-092:約束 
約束を破る時しか使われぬ反故の語源を思う路上に

2019-093:駐 
憂鬱な夜に悪夢の地図が要る駐輪場の薄い白墨

2019-094:悟 
生存は怠惰の経過だと悟りいっそ誰かに罰してほしい

2019-095:世間 
だらしない私を反乱分子だと世間は安易に決めつけてくる

2019-096:撫 
性癖は鼻血を舐めて掌の内側を撫でるそうやってただ

2019-097:
怨 怨むなら女に産んだ母親を女を殴る父親を責め

2019-098:萎
選べたらやり直せると思い込むもらった花は萎れるばかり

2019-099:隙
暴力は隙さえあれば機能する。空にふわふわ浮かぶ紋白

2019-100:皆
分かりやすい皮肉を込めて世界中大好き皆んな幸せになれ

2019年12月20日金曜日

題詠blog2019の事(9)

2019-081:暮 
暮れていく薄紫と桃色に滑空していく烏と私は

2019-082:米 
豚キムチ塩鮭鯖味噌カレールーお前たちみな米の奴隷で

2019-083:風呂
風呂場にて薄暗い明り照らし出す隅の隅にある角のほころび

2019-084:郵
過去となる郵便局の消印がぼやけず日々を突きつけてくる

2019-085:跳
すぎちゃった過剰な事実が形容詞それを跳躍と思えずにいま

2019-086:給料
今月のお給料日はいつかしらまがい物でないビールを飲む日

2019-087:豊
紅と裏に書かれた箱捨てる豊かさに飽いて貧しい日和

2019-088:喩
生きていて口をつぐんで元どおり隠喩のように使う切り傷

2019-089:麺
麺棒をあなたの頭に振り下ろす代りに出来た肉ハンバーグ

2019-090:まったく
最低と万回億回口にしてもまったくもって救いがなくて

2019年12月13日金曜日

題詠blog2019の事(8)

2019-071:名残り 
なすすべもなくエロティック白い皿夏の終わりに名残りの桃を

2019-072:雄 
名を欠いてあなたのことを雄と呼ぶ雌と呼ばれぬ私のために

2019-073:穂 
指の腹刺す夏の田の穂を摘み被虐的な神気取ってはいる

2019-074:ローマ 
ローマ字を練習する子ら教えつつ縦読みfuckを仕込む弱さよ

2019-075:便
本当にどうしようもない帰国する便の番号覚えてしまい

2019-076:愉 
他の人他の世界はめちゃくちゃで輪をかけ壊れる愉快痛快

2019-077:もちろん
いま平気?もちろん平気なんかじゃない芋虫になる修行をしてる

2019-078:包 
お祝いに持たす三徳包丁の深夜切れ味光る生肉

2019-079:徳
心には三徳包丁仕込んでて砥石で研いで君を待ってる

2019-080:センチ
若者に夏、固有名詞尽くすまでセンチメンタル消えろよ早く

2019年12月6日金曜日

題詠blog2019の事(7)

2019-061:消費
超優良消費行動美麗滋養享楽愉悦非回転寿司

2019-062:曙
さよならと梅雨ではあるがあけぼのを雨と一緒に寝ないで待とう

2019-063:慈 
睡眠と人と心を慈しむ誰かに認められないために

2019-064:よいしょ
不細工なごますりよいしょに腹芸に拳ですべて解決したい

2019-065:邦
邦人の死亡は確認できておりませんそれで良かったなんて言えるか

2019-066:珍
色々を向こう側の岸置いておく珍しく眠れないから今日

2019-067:アイス
切り合って分け合うアイスの多い方与えられるなら欲しもしない

2019-068:薄
夕立のあと薄紫ピンクいろ機嫌のような空の下にて

2019-069:途
口元のゆるい女と笑い合い途中下車して分け合う秘密

2019-070:到
いつかしら到る結末、怨恨と死と毒と金、一握り笑み

2019年11月29日金曜日

題詠blog2019の事(6)

2019-051:貼 
口角を上げて悪言を吐く口に便所紙貼る(使用済みのな)

2019-052:そば 
恋人と呼べなくなった人と取るただの美味しい中華屋のそば

2019-053:津 
ちれぢれの会津ラーメン肉乗せてはかない旅をしている真昼

2019-054:興奮 
分身の骨までしゃぶる興奮にいらぬ個性を恥じらっている

2019-055:椀 
両の手を空っぽにして椀にする与えられるなら欲しもしない

2019-056:通 
過去はまた不意の形で現れる通行人の翻る傘

2019-057:カバー
ディスカバーネクストレベル俺の身を案じるならば夢でも投げろ

2019-058:如 
最高の善は水の如くとし平気な顔で世間に溺れ

2019-059:際
金輪際人を好きにはならぬことそして好かれぬようにすること

2019-060:弘
墓跡へと向かう弘前駅にいる青色電車静かに眠れ

2019年11月22日金曜日

題詠blog2019の事(5)

2019-041:妥 
Stay with me darling 妥協ならこんなにみじめに泣いたりしない

2019-042:人気 
ひと気のない海に行ったら飛び込んで人魚になってあんたを殺す

2019-043:沢 
沢山の独占欲に囲まれて弁当箱の中は虹色

2019-044:昔 
悪意ある第三者なので昔から薄暗い部分ばかり見つける

2019-045:値
値踏みされ等しく扱うこともないそれでもできるそれだからやる

2019-046:かわいそう 
すごい象かわいそうな象えらい象暴れまくる象崇められる象

2019-047:団 
桃色の塗装が剥げた遊具あり団地の合間の時間が止まる

2019-048:池
池袋北口暗い階段で訳もわからず叫ぶだけ夜

2019-049:エプロン 
エプロンを付ければそこは不可侵に聖域になる茄子の煮浸し

2019-050:幹
白く立つ幹線道路の壁に沿い我ら我らのくすぶった影

2019年11月15日金曜日

2019年夏から秋ころの短歌

風向きやあざばかりの足お湯に入れ呪いは十年もすれば解ける

溜息の合間合間に息を吸う生きてるだけの空気人形

緞帳の夜がみるみる落ちてくる眠れないのは私だけじゃない

繰り返す悪い記憶と良い記憶どうか地獄で会えますように

何らかの条件付きで愛される野良犬になれば楽な毎日

じんせいの生の部分をやり抜いて人はどうして酒を飲むのか

感情の四隅が膿んで進めないそれでも平気な顔で暮らすの

眠れずに他人の声が聞きたくて周波数すら合わないラジオ

夜の川ラブホテルネオン反射して鮮やかな色はゆらゆら揺れる

人生で旨い酒飲む以外には楽しみもないそれで好しとす

容量が少なく過去が消えていく未来の入る隙間のために

ごみ箱のような味だと吐き捨てた安煙草さえ思い出になる

良いところ悪いところを数値化し結局何も選べずにいる

感情は行き場をなくしてしまいました梅雨のせいだと思いたいけど

2019年11月8日金曜日

2019年春から夏ころの短歌

私から今日から過去に去る人を止めたくなくてずっと淋しい

ベーコンと湯がき菜の花バター添え全てを選ぶ春を勝ち取る

缶コーヒーブラックカフェイン頼りにし寂しい夜を越せないでいる

嘘つきはどうにもならないどうしても世界をどうにか幸せにする

余白なく働いて食べて眠りつく自立とは何か聞くんじゃないよ

いつの日か泥となるそれを待ちわびて酒臭い町をゆらゆら歩く

油断して目玉みたいな月があり一人で暮らす夜のさわりに

さみしさで頭がおかしくなりそうでバター浸しのパンを焼いたよ

自己愛が強い人だけ残されて本日電車遅延順調

ぜんぶダメになった、と思い酒を空け、それでも明日は来るから眠る

地下鉄はいつもし尿の匂いして生きてるような車両の軋み

羽をもぐ果実をもいで脚をもぐ分かりやすさは暴力である

彼の人の集合住宅かかる月(そのまま真っ直ぐ落ちてください)

2019年10月25日金曜日

題詠blog2019の事(4)

2019-031:しっかり 
しっかりとした眉毛だけ覚えてる昔々の小さい恋の

2019-032:襟 
喪に服す襟元の染み白くなり彼岸と此岸、体液の故

2019-033:絞 
女との役割憎む雑巾をかたく絞れば滴る汚水

2019-034:唄 
裏声で歌え島唄千代八千代喉から祈り人生きるまで

2019-035:床 
朝焼けの色入る部屋磨かれた床に散らかる平日の死よ

2019-036:買い物
買い物のメモは途中で破り捨て肉のハナマサ依存生活

2019-037:概 
反抗を世間体には繰り返し幸福である概ね同意

2019-038:祖 
暴力と風呂で溺れて気は違い車轢かれた父祖を弔う

2019-039:すべて
きみのてにすべてあたえてしんぜようかわりにきみのきぼうをもらう

2019-040:染
髪の毛を染めて踵を高くするそういう鎧を必要とする

2019年9月27日金曜日

題詠blog2019の事(3)

2019-021:スタイル 
前世紀スタイルで征く大通り鱗のかわりに纏う脆弱

2019-022:酷 
やがて春いつものように残酷にきれいだけの別れを告げて

2019-023:あんぱん 
悪い夢だれの為とか悪いとかあんぱんまんのただの落書き

2019-024:猪 
たれは彼、猪突猛進良しとして引き返す度胸持たないことは

2019-025:系 
次は駅西口系統バスに乗るもう二度と来ない家の帰りに

2019-026:飢 
見た目には幸福満足然として飢えを見せないゆえに飢えてる

2019-027:関係 
つまらない関係性の終わりなど気にしてる暇はないのだ、進め

2019-028:校
天井に子供らの声はね返り下校音楽ただただ流れ

2019-029:歳 
この歳でその歳でってうるさいな人間いつかは死ぬから黙れ

2019-030:鉢
捨て鉢に心身を投げてしまえれば後悔しないしたかもしれない

2019年8月2日金曜日

題詠blog2019の事(2)

2019-011:元号 
逢引きの数をかぞえて元号を跨ぐそれだけ愛だか無駄か

2019-012:勤 
断れない状況をいかに作れるか人に憎まれ勤労を為す

2019-013:垣 
五歩先の垣根向こうに犬がいる名前も知らぬ友人として

2019-014:けんか 
生ぬるくけんかなど言いなさるなよ征服したいと正直に言え

2019-015:具 
言葉なぞ人がこさえた道具だろそれにどうして翻弄される

2019-016:マガジン 
ミスヤングマガジン海を背に腹に我らの夏を食い尽くしてく

2019-017:材
材料にお湯を加えて混ぜ合わせ今夜上等我等の風呂よ

2019-018:芋 
小学校授業で芋を掘ることがあるかないかで測る憧憬

2019-019:指輪
ぴかぴかに光る指輪が無くたって節の明るい人々の指

2019-020:仰
新しい種類の秘密を大仰に隠そうとして野暮におしまい

2019年7月5日金曜日

題詠blog2019の事(1)

2019-001:我 
贅沢を我儘を言えば積まれてく恋だか愛に応じましょうか

2019-002:歓 
蜘蛛の巣と空に溶けてく合歓の花憎いからゆえ思い出になる

2019-003:身 
爪の先髪の毛の先至るまで私の身体は私のものだ

2019-004:即 
激情と言って即ち私たちご都合主義に欲をぶつける

2019-005:簡単
これまでが記憶に歴史になっていく終わりが来るのは簡単なのに

2019-006:危 
好きな人嫌いな人を交差させ危なっかしい足取りで行く

2019-007:のんびり
のんびりを急かされるだけいやになる生きるのなんて短いだけで

2019-008:嫁 
着飾って夜叉が嫁入りなんていう紅の唇ころころ笑い

2019-009:飼
桃色の象を心に飼っていていつでも暴れる用意はしてる

2019-010:登
天辺を目指して登る途上線都合悪いこと見ないふりして

2019年3月22日金曜日

2019年冬ころの短歌

性格がすこぶる悪い、だから日々小さい嘘を吐いて騙って

さびしいし眠いしお腹もすいてるし満願飾の負を消すラーメン

雪が降る、ばいばい一月、そしてまた冷たくきれいな二月を迎え

雨の日に星を探さぬようなことどうせ全部はお決まりのこと

さみしくて眠れないのを繰り返す今日は生まれて何百回め

手を出してしまえばどうにでもなるか熟れゆくメロン状の感情

もういいし私の事は置いてって行って走って早く出てって

柔らかい存在を求め求められ喧嘩上等あまのじゃく故

反感も好意もすべて受け入れる二十歳の私と異なる私

幸せの絶対指標がわからないおいしいものを食べて眠って

後悔を燃やし黄色い火を見てる大したことは無いのだすべて

2019年2月8日金曜日

2018年12月くらいの短歌 巨大なシーツ

大恋愛してみたいとか必要な定義分からず言いたいだけの

いつか裂く仮定家庭を布地としその真ッ白な巨大なシーツ

これまでの生き方全部が盾であり突き立つ弓を跳ね返してる

いまこのとき、壊れた、と感じ立ち止まる(そもそも理性はそういうものだ)

償いと言われがちなら単純で誰の上にも雨の降る降る

若者の全てだなんて言外に羨みだけを述べてるだけで

街灯の光きみの目反射してEye socket の原型を問う

首に巻く綿か錦か腸か千切れないなら何だって良い

目の前に手近にあった愛だからそういう求め方しか知らない

生活を再開すべく会う人へ媚びを売らぬかあるいは買うか

白菜の半身を買う冬になり忘れるだけの悔いを重ねる

2019年1月18日金曜日

2018年11月くらいの短歌 スリッパを捨てないで

抽斗の取っ手が取れて開かない中には何があったか知らず

もう意味がわからないから眠るけどまた意味のない夢を見るのだ

交差するわけない価値を争って陳列棚の色を眺める

音節も付けず淋しい悲しいと生意気なだけの年寄りである

優しいと事実それしか嘘はなく周りの恋は自惚れていく

濃淡のない毎日を平和だと思えず酷い恋人を乞う

言うなれば無償で愛を与えてるそういうむごさに気づかず一人

抜かりなく月曜夜を致すため度数の弱い安酒を買う

眠るならいっそ悪夢であればいい楽しい今日を終わらせるよう

他者のため数字で語ることばかり(いわゆる)幸福(広く)平均

酔っ払うあなたが語る淋しさを埋められないと知ってるわたし

人による親愛のグラデーションを淋しいと思う、ただそう思う

もう二度と来ない人用スリッパを捨てないでまたゴミの日が来る

不細工な爪の形で与えられ無駄にしている優しい人ら

やることが沢山あるのは分かってて煮え立つ鍋を眺めてるだけ

日常に不足あるいは皆無という叙情を買いに本屋へ行こう

からからの枯葉あるいは霜柱踏むだけの距離持てないで泣く

自慰自傷自愛自意識自暴自棄きみと自由を選べればいい

2019年1月4日金曜日

2018年9月くらいの短歌 世界戦争

望んでもいない未来の終わりごと丸め込まれる台風の夜

勇敢で美しく至れ眠り着く指輪物語子に説きながら

爪を切るうんざりだとか妬み等ぱきょんぱきょんと切り離しつつ

どろどろのでろでろになる真夜中にどうか寄る辺を決めないでいて

後悔を燃やし黄色い火を見てる大したことは無いのだすべて

生き死にの時を選べずただ走るそういうことが大好きでいる

温かい湖に沈む夢を見てこんな楽しく淋しい朝に

汚れてる手を洗っては汚してる救いようのない日なたの暮らし

振りかざす青い正義の臭うこと漂白剤のようにひりつく

届くとは思えないけど祈るだけ自分を救う何かのために

打ち崩す砂糖の城をいとおしむふたりぼっちの世界戦争

桃、レモン、果物の型、愛に見え果てないことを考えている

眠れない夜空の月はトンネルで知らぬ世界と繋がっている