2019年1月18日金曜日

2018年11月くらいの短歌 スリッパを捨てないで

抽斗の取っ手が取れて開かない中には何があったか知らず

もう意味がわからないから眠るけどまた意味のない夢を見るのだ

交差するわけない価値を争って陳列棚の色を眺める

音節も付けず淋しい悲しいと生意気なだけの年寄りである

優しいと事実それしか嘘はなく周りの恋は自惚れていく

濃淡のない毎日を平和だと思えず酷い恋人を乞う

言うなれば無償で愛を与えてるそういうむごさに気づかず一人

抜かりなく月曜夜を致すため度数の弱い安酒を買う

眠るならいっそ悪夢であればいい楽しい今日を終わらせるよう

他者のため数字で語ることばかり(いわゆる)幸福(広く)平均

酔っ払うあなたが語る淋しさを埋められないと知ってるわたし

人による親愛のグラデーションを淋しいと思う、ただそう思う

もう二度と来ない人用スリッパを捨てないでまたゴミの日が来る

不細工な爪の形で与えられ無駄にしている優しい人ら

やることが沢山あるのは分かってて煮え立つ鍋を眺めてるだけ

日常に不足あるいは皆無という叙情を買いに本屋へ行こう

からからの枯葉あるいは霜柱踏むだけの距離持てないで泣く

自慰自傷自愛自意識自暴自棄きみと自由を選べればいい

2019年1月4日金曜日

2018年9月くらいの短歌 世界戦争

望んでもいない未来の終わりごと丸め込まれる台風の夜

勇敢で美しく至れ眠り着く指輪物語子に説きながら

爪を切るうんざりだとか妬み等ぱきょんぱきょんと切り離しつつ

どろどろのでろでろになる真夜中にどうか寄る辺を決めないでいて

後悔を燃やし黄色い火を見てる大したことは無いのだすべて

生き死にの時を選べずただ走るそういうことが大好きでいる

温かい湖に沈む夢を見てこんな楽しく淋しい朝に

汚れてる手を洗っては汚してる救いようのない日なたの暮らし

振りかざす青い正義の臭うこと漂白剤のようにひりつく

届くとは思えないけど祈るだけ自分を救う何かのために

打ち崩す砂糖の城をいとおしむふたりぼっちの世界戦争

桃、レモン、果物の型、愛に見え果てないことを考えている

眠れない夜空の月はトンネルで知らぬ世界と繋がっている