2019年11月29日金曜日

題詠blog2019の事(6)

2019-051:貼 
口角を上げて悪言を吐く口に便所紙貼る(使用済みのな)

2019-052:そば 
恋人と呼べなくなった人と取るただの美味しい中華屋のそば

2019-053:津 
ちれぢれの会津ラーメン肉乗せてはかない旅をしている真昼

2019-054:興奮 
分身の骨までしゃぶる興奮にいらぬ個性を恥じらっている

2019-055:椀 
両の手を空っぽにして椀にする与えられるなら欲しもしない

2019-056:通 
過去はまた不意の形で現れる通行人の翻る傘

2019-057:カバー
ディスカバーネクストレベル俺の身を案じるならば夢でも投げろ

2019-058:如 
最高の善は水の如くとし平気な顔で世間に溺れ

2019-059:際
金輪際人を好きにはならぬことそして好かれぬようにすること

2019-060:弘
墓跡へと向かう弘前駅にいる青色電車静かに眠れ

2019年11月22日金曜日

題詠blog2019の事(5)

2019-041:妥 
Stay with me darling 妥協ならこんなにみじめに泣いたりしない

2019-042:人気 
ひと気のない海に行ったら飛び込んで人魚になってあんたを殺す

2019-043:沢 
沢山の独占欲に囲まれて弁当箱の中は虹色

2019-044:昔 
悪意ある第三者なので昔から薄暗い部分ばかり見つける

2019-045:値
値踏みされ等しく扱うこともないそれでもできるそれだからやる

2019-046:かわいそう 
すごい象かわいそうな象えらい象暴れまくる象崇められる象

2019-047:団 
桃色の塗装が剥げた遊具あり団地の合間の時間が止まる

2019-048:池
池袋北口暗い階段で訳もわからず叫ぶだけ夜

2019-049:エプロン 
エプロンを付ければそこは不可侵に聖域になる茄子の煮浸し

2019-050:幹
白く立つ幹線道路の壁に沿い我ら我らのくすぶった影

2019年11月15日金曜日

2019年夏から秋ころの短歌

風向きやあざばかりの足お湯に入れ呪いは十年もすれば解ける

溜息の合間合間に息を吸う生きてるだけの空気人形

緞帳の夜がみるみる落ちてくる眠れないのは私だけじゃない

繰り返す悪い記憶と良い記憶どうか地獄で会えますように

何らかの条件付きで愛される野良犬になれば楽な毎日

じんせいの生の部分をやり抜いて人はどうして酒を飲むのか

感情の四隅が膿んで進めないそれでも平気な顔で暮らすの

眠れずに他人の声が聞きたくて周波数すら合わないラジオ

夜の川ラブホテルネオン反射して鮮やかな色はゆらゆら揺れる

人生で旨い酒飲む以外には楽しみもないそれで好しとす

容量が少なく過去が消えていく未来の入る隙間のために

ごみ箱のような味だと吐き捨てた安煙草さえ思い出になる

良いところ悪いところを数値化し結局何も選べずにいる

感情は行き場をなくしてしまいました梅雨のせいだと思いたいけど

2019年11月8日金曜日

2019年春から夏ころの短歌

私から今日から過去に去る人を止めたくなくてずっと淋しい

ベーコンと湯がき菜の花バター添え全てを選ぶ春を勝ち取る

缶コーヒーブラックカフェイン頼りにし寂しい夜を越せないでいる

嘘つきはどうにもならないどうしても世界をどうにか幸せにする

余白なく働いて食べて眠りつく自立とは何か聞くんじゃないよ

いつの日か泥となるそれを待ちわびて酒臭い町をゆらゆら歩く

油断して目玉みたいな月があり一人で暮らす夜のさわりに

さみしさで頭がおかしくなりそうでバター浸しのパンを焼いたよ

自己愛が強い人だけ残されて本日電車遅延順調

ぜんぶダメになった、と思い酒を空け、それでも明日は来るから眠る

地下鉄はいつもし尿の匂いして生きてるような車両の軋み

羽をもぐ果実をもいで脚をもぐ分かりやすさは暴力である

彼の人の集合住宅かかる月(そのまま真っ直ぐ落ちてください)